ごめんね、ガンになっちゃったよ
食べるのが大好きなPくんが、「この頃ちょっと食べ物が喉に詰まるんだよなぁ」と言い始めて数ヶ月が経った頃、一緒に行った外食先でものすごいむせ返りで大変な時がありました。これまでも検査は勧めていましたが、中年によくある逆流性食道炎くらいなものだろうと、つい先延ばしにしていたのは事実。でも、そのひどいむせ返りを機に、本人もやっと大きな病院で検査する気になったようです。数日後、検査結果を聞いて帰っていたPくんから、話があると言われて向き合うと、私のことをハグしながら1番聞きたくなかった病名を私に告げたのです。
「ごめんね、ガンになっちゃったよ。ごめんね、ごめんね」。
そう言われても、私はただ呆然とするだけで、急なことに涙も出ません。もちろん実感なんて全くわきませんでした。一瞬時が止まったという表現があるけれど、そんな感じ。
「うそ~、うそ、うそ。」
咄嗟に出たのはそんな言葉でした。でもそんな嘘をPくんが真顔でつくわけはないことはわかっています。狐につままれた気持ちで、とりあえず現実と受け止めて対処していくしかなさそうだなと思いました。
検査をしてから3日後、医師から連絡があり、悪い結果は異例の速さで本人に知らされました。このときの事は、本当にドラマのワンシーンみたいに覚えています。「ごめんね」って言う言葉を私に言うのは、ふさわしくないな~と最初は妙に冷静に感じていました。誰よりかわいそうなのはPくんなのだから。でも今はわかります。病気と向き合うのは、確実に本人に違いないけれど、その家族(身近な人)も共に闘わなくてはならないわけです。サポートをする側として、家族ならではの全く別の闘い方がある事は、その時はまったくわかっていませんでした。
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